no.010 「建築すると言うこと」
     1987年卒業 倉田研究室(設計) / 宮宇地研究室(論文) 城倉 英二
   
 

 自分の家の評価を数値化して、使い勝手よりも「高く売れるかしら…」と施主が気にしだした。
 IT技術の浸透は、情報化社会を高効率で実現してしまった。相反する情報を手軽に入手出来ることで特定の価値観が育ちにくくなり、価値観の乱立を生み出す世の中が実現のものと成ってしまった。
 信条を分かち合いにくい社会状況下で頼りになるのは、『金だけ』と言う事か。

  価値観が乱立しもしくは猛烈な勢いで移ろい行く状況下で、例えば店舗建築に求められる条件として考えられる事は、唯一の生き残りの世界基準・店舗を効率よく運営するんだと言う立場から、改装の時には安く短期間にに自由自在に着せ替え出来るような建物である事は容易に想像できる。

 言葉にすれば「スケルトン」だの「インフィル」という事に成るのだろうか…
だからといって鉄骨ラーメン・ブレースの骨組にALCを巻いただけの正に箱だけ建物を量産し続けるのは将来的に意味の有る行為であるかと言うとと少し違うように感じる。

  今どんな建築を作ることが良いのかと考えると、何点かのポイントはすぐにが浮かびあがってくる。

  一つはエコロジー、自然エネルギーの有益な活用は、誰も文句を言えない唯一の世界基準になっている。
 一つは「スケルトン」部分を戦略的に建築化してゆく、新しいインフラ=そこにあるべきもの・自然と捕らえてどうにか実現しようとする動きである。その動きの根底には前述にある分断された社会をもう一度接続したいという事に応えようとしている。

  他にも対応方法はあるのだろうが、実は二つの項目を主題にコンペを行っているので是非ごらんになっていただきたいと思う。

 コンペ案(1) 建築そのものが空調装置のような建築です。
 コンペ案(2) 地域住民の日常的な活動/使用サポートすることを最大の目的に考えた。あえて屋外空間との連続性をもたせた。
 
[プロフィール]    
城倉 英二
   1987年卒業 倉田研究室(設計) / 宮宇地研究室(論文)
   

 2つの設計事務所を経て、白江建築研究所に勤務
  2003年にJ.M.M.建築計画事務所(http://www.jmm.ne.jp/)開設。
  白江事務所で出会ったメンバーと共同で事務所を開設し現在に至る。
テナントビル、集合住宅、住宅等の設計を主に行っている。

 「建築設計という職能に何が可能か?」の苦悩を日々持病のごとくにいだくも、笑顔を絶やさぬ大柄なガタイの好漢であることは昔からかわらない。何度かの推敲を経て原稿をあげてもらい、その感を強くしたのでした。