no.022 「近代建築再考」
     1987年卒業 宮宇地ゼミ 二瓶 渉
   
 

 最近、とても印象に残った建築に2つ出会いました。

  1つは、名古屋大学豊田記念講堂。
  長い間なかなか訪れずにいた建築で、名古屋出張の帰りに新幹線の出発を予定より遅らせて、名古屋大学構内にある記念講堂に行ってきました。

  設計は、槇文彦氏。なんと竣工は、1960年。
  ル・コルビュジェのラ・トゥーレット修道院が1953年竣工ということを考えると、感慨ひとしおです。数年前にリニューアルされたと聞いていたので、壁面等がきれいに補修されすぎると、近代建築の見たときに感じる圧倒的な力強さが失われてしまうのではないかと心配していました。がしかし、コンクリートの柱が端正なプロポーションで立上がりながら、とても力強い作品でした。
建築の前面には広場があり、そこからファサードを見上げると、メガストラクチャーの中から、建築が浮き上がったように見えます。

  久々に、建築が本来持っている”POWER"に出会い、しばらくしてからでも、深くその感覚が刻まれたくらい、強い印象でありました。

  2つ目は、法政大学55/58年館。皆様ご存知、1955年、1958年竣工した大江宏氏設計です。
  市ヶ谷キャンパスにあるこの校舎には、当初小金井校舎で学んでいたため、ちゃんと見学せずに卒業してしまいました。

  その校舎が解体、建て直す計画があり、その計画に異議を唱えるために「法政大学55/58年館の再生を望む会」が発足され、恥ずかしながらその見学会にてはじめて、大江新先生に案内してもらいようやく“じっくり”見たのです。

  ピロティや軽快な割付けのカーテンウォール、そしてシェル構造のルーフといった近代の建築的要素がちりばめられながら、どこか日本的要素が感じられる建築です。

  教室前の天井高のある廊下には、カーテンウォールの手前に並ぶ円柱が、寺院などのモニュメンタルな列柱を連想させます。

  列柱が佇んでいる空間がとても力強く感じ、ここでも空間が心に刻み込まれたのです。

  現役でちゃんと使用されている大学校舎ですが、とてもメンテナンスが行き届いていて、初期のオリジナルを細部に渡って継承してことも手伝って、当初の建築がちゃんと息づいているのも大きな理由でしょう。どうしても、頭で考えて理解をしようとして、建築を見る事が多いこのごろであったので、いずれもこの2つの建築を通じて、あらためて考えたことは、建築を“感じる”ということでした。空間が発するメーセージを感覚で受け取ることで、空間は、はじめて“心に刻まれる”風景になるような気がしました。

  近代の持つ、ストラクチャーの強さが、そうさせたのでしょうか。

  2つの近代建築を通じて、なんとなく思いました。

 
 
 
 
[プロフィール]    
二瓶 渉
   1987年卒業 宮宇地ゼミ