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「想定外とテクノロジーアセスメント〜中学生への『技術』教育の実践」
     1979年卒業 半谷ゼミ 本間 正彰
   
 

 私は現在、埼玉県の県立工業高等と、千葉県、埼玉県の私立中学3校で「技術」、「発電・送電システム」、「情報」を担当しております。

  私が建築を目指した動機は高校2年生の時に開催された大阪万博のパビリオンをテレビで見たことでした。特に大スパン構造物に魅せられ、構造の名門法政大学に入学できました。後年大学院2年の時、川口衛先生が構造を担当されたお祭り広場の解体解析を阿部優先生の指導でお手伝いしたのが自慢の一つです。私は団塊世代の最後に属しますが日本の高度成長期に仕事ができ、ものづくりの楽しさを享受できた最後の世代なのかも知れません。

  近年、中学、高校生の理科離れが叫ばれ、かつてものづくり国家を誇った日本の若手技術者の質の低下が問題視されております。加えて2011年3月11日の東日本大震災と直後に起こった福島原発事故を契機に日本の技術に対する信頼が揺らいでいます。

  工学、特に構造学(強度設計)はどのような外力が作用するかを「想定」することが基本となりますが、今回の津波や原発事故では「想定外」が一時免罪符のように関係者から語られましたが、あの震災以降「想定外」は許されなくなりました。

  私は五十代前半までプラント構造物の設計に携わって参りました。特に原子力発電プラントや核燃料サイクル施設の建設にも携わってきた経緯と反省から、東日本大震災に起因した福島原発事故の後始末、すなわち今後数十年から数百年掛かると言われる放射性物質の除染、原発再稼働論議、再生エネルギーへの転換等、我々の世代の「負の遺産」を担わざる得ないこれからの世代に、日本の技術の現状とともに、事故や失敗を通して学ぶ意義を伝えていく事の義務感のようなものを感じております。

  中学校での唯一の実業科目にして総合科目である「技術」の教育目標は時代と共に単なる「ものづくりの方法論」から、地球環境との共存、エネルギーの有効活用、高度最先端技術や情報化社会での「技術評価能力」(テクノロジーアセスメント)の育成へと変わってきております。今年度は座学ではNHKの原発関連番組(http://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/0310/ http://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/0317/)等をビデオで見せながら生徒達の技術社会で生き抜く力を身につけさせることを試みました。最後に生徒達に課した考察小論文を2本紹介します。

  『放射性廃棄物の処理方法が現在でも明確に決まっていないことは問題だ。なぜなら放射性廃棄物の処理方法こそ日本の原発建設計画ができたときに話し合っておくべき事項だからだ。広大な国土を持つ米国などと違い日本では固有の地形や風土が放射性廃棄物処分の妨げになることが分かっていたはずだし、そもそも処理技術自体が未解決の課題を多く抱えている。過去の日本の経済成長期に目先の利益に目を奪われて原発を作ってしまったことが良くないと思う。だから私は、次の世代を担ってゆく私達が大人になったときに放射性廃棄物の処理についてどのように考え、どのような結論を出せるかが非常に重要だと思う。』

  『毎日テレビから流れる福島原発の悲惨な状況は日本だけでなく世界中に衝撃を与えた。このような状況を知ることができたのは紛れもなく、人間には侵入不可能な所に入っていけるロボットのおかげである。しかし、高レベルの放射能環境下やガレキが散乱した現場で適応できるロボットの導入はまだ完璧ではない。私はこれからのロボットの機能の発達に期待するとともに、建設機械も含めて制御技術の研究開発は震災や原発事故被災地の復興に必要不可欠だと思う。』

  若い世代に期待したいと思います。

 
 
 
 
[プロフィール]    
本間 正彰
   1979年卒業 半谷ゼミ
   

S54年度修士修了 半谷ゼミ
S54年 日設エンジニアリング入社後
海外プラント建設、エネルギープラント建設 核燃料サイクル施設設計に携わる
H17年 イー・イプシロン研究所主宰

現在
文教大学生活科学研究所客員研究員
NPO CAFE´ ものづくり松下村塾副塾頭