no.041

「水とともに生きるまちアムステルダム」
     2004年修了 陣内ゼミ 岩井桃子
   
 

 私はオランダ、特にアムステルダムの町が大好きだ。何と言ってもアムステルダムの水辺空間はとても居心地がよい。港の風に吹かれ、開放感たっぷりだ。オランダが好きになったきっかけといえば、修士1年の夏にオランダの水辺都市調査に参加したこと。遠い日本からやってきた私という旅人を優しく受け入れてくれ、そして、オランダ人の気さくで親切な人柄や、古いものを大切に扱いながらも新しいものを受け入れようとする柔軟性に触れ、私はすぐにオランダという国に興味をもった。結局、アムステルダムの都市形成史や都市住宅に関する修士論文を書くことになった。

 それ以来、オランダ特にアムステルダムとの付き合いは続いている。何よりもまず感じることは、アムステルダム市民は水辺ですごすのが好きだということ。仕事の終わった後や休日、多くの市民が船を出して市内の運河をめぐる。船上の結婚パーティーをしている人たちも見られた。水辺のカフェやホテルにはデッキを設けているところがあり、そこからアプローチをすることができる。市民の足のひとつであるフェリーは無料で運航しており、市民に日常的に気軽に使われている。5年に1度、「セイル」という水上のお祭りもあり、たくさんの船が水上に現れる。市内では水上コンサートも毎年開催され盛況だ。

 市民が楽しく気軽に水辺をつかう機会が用意されているのっていいなあと思う。ただ、水への対策をオランダは考えなければならない。オランダは低地の国。国全体に堤防線を張りめぐらし、水門を設け、つねに水位を調整している。

 アムステルダム市内の運河にそって柵が設けられる場所はほとんどないため、運河に落ちてしまったら自分で泳がなければならない。事実、学校で着衣水泳の授業がある。子どもたちに服を着せたままプールで泳がせている場面に居合わせたことがあり、とても衝撃を受けたのを覚えている。
 アムステルダムは13世紀後半に誕生した港町。北ヨーロッパの貿易拠点として栄え、「黄金の17世紀」と呼ばれる爆発的発展を経て、今に至るまで、脈々と「水」とともに発展をつづけてきた。恩恵を受けるときもあるし、大きな被害を受ける恐れもあるが、いずれにせよ、市民には「水」とつきあう精神が受け継がれている。これからも「水」とともに生き続けるのだと思う。

 
[プロフィール]    
岩井桃子
   2004年修了 陣内研究室
   

大学院修了後に在籍した法政大学大学院エコ地域デザイン研究所にて、東京の都市に関する展覧会に携わったことがきっかけとなり、以後、パブリックアートの企画・プロデュース会社勤務を経て、現在は展覧会やイベントの運営、キュレーション等の活動を行っている。また、修士論文を加筆・修正し、『水都アムステルダム』を最近出版した。