no.070

地域に生きるということ

   

2013年修了 渡辺真理研究室 洞口苗子


 

どこのまちも同じような風景に更新されていく。
それはなにか、そのまちのスケール=地域経済とかけ離れた、大きな流通や仕組に支配されている、と感じることがある。

人口縮退時代において、まちが「選ばれる」側となった現代、今後それぞれがいかに個性的・魅力的で、同時に経済的に持続可能であるかが、人を呼び込み生き残る鍵となるだろう。

そんな中、現在の「建築家」の役割についてもどかしさを感じることがあった。果たして建築は本当に、そのまちを豊かにしているのだろうか。
なにか、まちの【リアルな豊かさ】を追求するポジションが足りない。
もどかしさと同時に、建築家はそのポジションを担うのに適した教養と技術を有している、という希望も感じていた。

宮城県仙南の岩沼市へIターンして間もなく3年になる。
仙台の南側 =「仙南」と呼ぶが、「仙南」には、広瀬川、名取川、阿武隈川をはじめとした、手つかずの川資源や多くの山資源に溢れている。また、旧奥州街道の古い町屋も魅力的だ。
しかし、そこに人を呼び寄せる仕掛けはなく、友人を招きたくなるような「ここにしかない」体験ができる場所はほとんどない。
こうした仙南エリアの遊休資源を活かしたい!仙南エリアを魅力的にしたい!という想いの中、主人の洞口文人(渡辺研出身・2012年修了)主導のまちづくりイベント(リレーエッセイ no.069参照)で出会った同志と共に、(株) 仙南家守舎を立ち上げた。いわば、まちの総合プロデューサーというところだ。ある小さなエリアを設定し、「まちを使いたい人」と、不動産オーナーを繋げて、小さく確実にまちを盛り上げていく。
もちろん、この「まちを使いたい人」は仙南家守舎のメンバーも当事者である。黒板アーティストTOMOMI_Typeとしても活躍中の松田友望は、チョーク1本で人を呼び寄せることができる。 また、(株)高野建設の映像部門を立ち上げ、山・川不動産を所有する高野裕之は、丸森町の広大な自然資源を活かしたドローン事業をリードしていく。全員がまちをフィールドに、「やりたいことをやる」。

家守とはすこし違うが、私個人としては、岩沼市の緑道に面した築60年以上の古家を購入し、自宅と義母の美容院に改修予定である。住まいながら何十年もかけて緑道一帯のエリアを「歩いてたのしいまち」に盛り上げていきたいと考えている。

「選ばれるまち」を築く地域の担い手として、仙南エリアの遊休資源活用と地場産業を育てながら、建築家の可能性を模索していきたい。


(株)仙南家守舎HP:

http://sennan-yamorisha.wix.com/sennan-yamorisha

 

 
  設立メンバーと家守会社の仕組み。
 
  (上)「丸森ドローンフィールド」の試験飛行としてドローン操縦中の高野裕之。
(下)まちづくりイベントにてライブペインティングを行ったTOMOMI_Type。
   
 
  仙南エリアである岩沼市館下にある築60年以上の古家。改修し、自宅と義母の美容院とする予定。この佇まいから「館下御殿」と呼ばれていたそうだ。
   
   
   
   
 
 
[プロフィール]    

洞口 苗子(旧姓:渡辺)

2013年修了 渡辺真理研究室
   

1987年 神奈川県藤沢市生まれ。 法政大学デザイン工学研究科建築学専攻渡辺研究室にて、石巻市牡鹿半島の震災復興計画に携わる。修士論文では、現地調査・ヒアリングを通した被災低平地復興提案「地に経つ建築 ー石巻市荻浜における震災復興提案ー」にて、大江宏賞を受賞。修了後、宮城県へIターン。2013年 都市建築設計集団/UAPPへ入社。 一級建築士。東北の古民家や蔵等の資源・風土や地域の人材を活用すべく、「地域に生きる建築家」を目指している。