no.083

ミラノの新しい風景「垂直の森」を見学しました
   

安部彩英子(1992年卒業 大江新ゼミ) 


 

 昨夏、何十年ぶりに訪れたミラノは変貌を遂げていました。もちろん歴史的建造物のある中心部は壮大なスケールのまま存在感たっぷりで鎮座しているのですが、その周辺では再開発が進んでいて、かなりモダンな印象になっています。その中でも世界中の建築家が注目する高層レジデンス「垂直の森」を見学させて頂きました。18階、26階のツインレジデンスの現時点の入居率は約80%、外国人が多くを占めています。最初の植栽工事から4年、入居から2年が経ちました。

  このレジデンスはバルコニーまでが分譲(賃貸も)となっており、植栽桝と中の樹々や植物はレジデンスオーナーの持ち物です。メンテナンスも一括管理の中で成長する樹種、淘汰されて朽ちる樹種など記録を取り、植替えや剪定など定期的に行っています。また屋上の太陽光発電による自動灌水装置で水やり、機械室の制御装置でプログラム管理を行っています。状況により変更したり、問題点を修正しながら実験数値を記録しています。植物には虫や鳥もつきもので、入居者の中には最初は嫌がる人もいたそうですが、風景だけでなく、温度調節などの緑の効果を理解し、快適に暮らしているようです。特に夏の涼しさ効果は抜群です!私も夏の暑い日に実際にお部屋を見せて頂いて実感しました。

 植栽計画及びコンサルを担当したLaura Gatti氏に話を聞きました。
「東西南北それぞれの環境にあった植物を選択しています。高木は植える2年以上前から畑で養生してきました。上空で育てる植栽工法の研究や風洞実験も重ね、施工に至りました。計画当時は北側住戸が心配されましたが、日当たりの良すぎる南側より植生は安定しています。新しい試みは賛否両論、紆余曲折ありますが、これからの管理メンテナンスと植生記録を取りながらずっと垂直の森を維持したいと思っています」

 現時点で高木の倒壊もなく、植物も豊かに成長しています。Laura氏は日々レジデンス内の共用部を回って、植物の生育状況や自動灌水のチェックなどを自分の目で確かめています。剪定作業は屋上から職人さんが綱をつけて手作業で行いますが、その様子からNingia(忍者)と呼ばれているようです。施工時には年単位でのメンテナンス計画も契約に含まれていました。造って終わりではない状況がとても大事だと感じています。5年後10年後の姿がとても楽しみです。

 

 
ツインレジデンス
   
 
  バルコニーに立つと
   
  バルコニーを見下ろしてみる
   
  植栽施工中の様子
   
   
 
[プロフィール]    
あんべ  さえこ    
安部 彩英子 1992年卒業 大江新ゼミ

   
和彩総合事務所
1992年 鹿島建設ランドスケープデザイン部入社
1999年 在イタリア
帰国後、ランドスケープデザイン社を経て独立 現在に至る

イタリアのランドスケープ事情をブログでも発信しています(垂直の森の詳細記事も是非こちらから)
http://verdetosca.exblog.jp/