no.123

From Casa Malaparte with Love
2020年9月  

濱田 徹三(1970年卒業 河原ゼミ) 


 1964年の暮れ 東京オリンピックも終了し、早稲田の予備校通いの浪人中の身としては年が明ければ間違いなく入試地獄となる不安を抱え 日々を過ごしていた時、ジャン=リュック・ゴダール監督、ブリジット・バルドー主演の『軽蔑』という映画を見てしまい、ストーリーもさることながら その舞台となった建物が強烈に脳裏に 焼き付けられてしまった。

 それから25年が経ち「世紀末の都市と建築を巡る旅」なるツアー案内が目にとまり その建物が小さく訪問地として記載されていたのでこれはと参加することにした。

 ナポリ港よりボートでカプリ島に向かうが 時間が余ったので 定番の「青の洞窟」へ。

 洋上で小さなボートに乗り換えギリギリ狭い入口より洞窟内に入ると 内部はそこそこ広くそれぞれの小舟の船頭が勝手にナポリ民謡を歌いはじめ反響が凄かったが、洞門を通して入る光が白砂に反射し浮かび上がる海の色 マリンブルー の鮮やかな素晴しさが体感できた。再度大き目のボート(20人乗)に乗り換えマリンブルーの波をかき分け、島伝いに目的地Casa Malaparteへと向かう。

 暫くすると岬の先端の絶壁の上に、階段状の特徴ある暗赤色の姿が現れ、それを右手に見つつ入江に回り込み(映画では この入江で、B・Bが全裸で泳いでいた)専用の小さな桟橋に降り立ち、岩壁を彫り込み細くうねった階段を登り途中にある門の所で待つこと15分。やっとマラパルテ一族の末裔という爺さんが迎えてくれ、まずは屋上へ登れと案内されるが、階段の下で“待て”との指示。暫くするとOKのサインで末広がりの階段を登ると、その爺さん 屋上テラス(ソラリウム=日光浴場)の最先端に椅子を置き、白いパンツに真っ赤なポロシャツで待ち構えていてくれた。この白と赤、地中海のマリンブルー、青空のスカイブルーをバックに 振り返れば 映画でB・Bが寝そべり目隠しとなっていた白いカーブの壁、さらにソラリウムには手摺は無く端は断崖絶壁という緊張感タップリの場で、この最高の演出。この爺さん 只者ではない。身振り手振りで感謝の気持ちを伝えた。

 ディテールはとてもシンプルで、ベンチ代わりになる窓台、サッシレス中折れガラス窓(初期のシトロエン2CVの窓も同じだった) ガラスドア直接にレバーハンドル 等々が気になった。

 カーサ・マラパルテ・カプリ で検索すれば Wikipedia、Internet、YouTube、Google Earth,等々でかなり詳しい情報が得られます。

 しばし堪能し ツアーは イタリア、フランス、オーストリア、へと続いた。

 

 

岩壁の上のCASA MALAPARTE
 
ソラリウムへの裾広がりの階段
 
招き入れてくれた素敵な爺さん
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
[プロフィール]    
はまだ てつぞう    
濱田 徹三 1970年卒業 河原ゼミ

   
法政大学・工学部・建築専攻
河原一郎ゼミ
1970年(18期)卒業
竹山実建築綜合研究所(1969~1978)
studio BAFFI (ストゥディオ・バッフィ)(1978〜現在)