空気の輪郭 −ラウムプランの新たな展開−

 建築の内側を移動する、あるいは視線を上や斜めにやってみる。するとある空間から次の空間へと切り替わる場所に、空気の厚みのようなものを感じることがある。それは、水平の天井面、床面と、垂直の壁が交差する箇所にある視線の条件を満たした時に現れる。
 面で覆われた箱を実のヴォリュームとするなら、[虚のヴォリューム]ともいえる、輪郭だけを持った空気の塊である。
 またそれは、空間同士に膨らみを持たせ、幾何学によって構成された建築の中に、ある想像のユトリを与えてくれる。
 立体的な都市構造をもつアマルフィ、隅部の処理に優れたロラン・シムネのピカソ美術館の調査に赴き、その空間的原理の分析を行なった。また、アルヴァロ・シザの作品にみられる空気の輪郭のデザイン手法を研究し、設計する段階で、どのように応用が可能であるかのヒントを探った。
 設計スタディーを繰り返す中で、この原理の問題点を発見しながら、徐々に理解と精度を高めていった。


プロフィール
氏名  野村 裕志
出身地    東京都
所属ゼミ    富永研究室
卒業後の進路   鹿島建設株式会社

[大江宏賞TOP] [2008年最終選考作品]