建築における隅の消失の可能性

 私の提案は分断された3つの地域を混ざることである。敷地である御茶の水は古書街、ビジネス街、学生街と3つの地域が混在している。それぞれの地域は非常に活発的でありエキサイティングである。その3つのアクティビティ地域内で閉じるのではなく、他の地域へ緩やかに接続できれば、新たなアクティビティの広がりの可能性があると考えた。
 そこで私は隅の消失した建築を考えた。各部屋は隅の消失によって、空間の室が滲み出し、流動性がもたらされる。それぞれのアクティビティは完全に切り分けられたものではなく、連続したものになる。ゆえに、この隅の消失した建築を訪れる人々は、行きたい場所を自分自身で確認しながら、選択することができる。隅が消失することによって緩やかに繋がっており、気がついたら図書館のゾーンにいたり、学生のゾーンにいたりするということが起こる。それは機能という枠組みでは捉えきれない新たな空間として、多様化する空間の関係性をつくり上げ、豊かなものにしてくれると思っている。
 隅の消失によって多くの人を隅の先に行ってみたいと思わせたり、隅の先で何かが起こりうるような建築を目指した。そのアクティビティは建築の外にも広がり、人々に常に何かを見つけ出す喜びを感じながら生活してゆく。


プロフィール
氏名  篠崎 邦博
出身地    埼玉県
所属ゼミ    渡辺研究室
卒業後の進路   前田建設工業株式会社

[大江宏賞TOP] [2008年最終選考作品]