第9回〔法匠展50〕作品
縦と横への意識と実際

日本の現代建築のデザインを創り出している筆頭は、なんといっても丹下健三だろうが、彼の柱と梁のプロポーションは横長である。天井高というものは、どんなに低くしても限度があるから、横長のプロポーションをつくろうとすれば、どうしても柱間を広くして、梁を長くしなければならない。日本の構造ではこれは不利である。
丹下は、梁にあたう限りの鉄筋をぶちこみ、また太くなって、構造上得策であろうがなかろうが、そこを強引に押し通してしまう。大江はこの強引さを持ち合わせていない。であるから大江宏のプロポーションは、どうしても縦長となる。大江の方が、構造自体からいえば、むしろ原理的である。
簡単なことのようだがこれが丹下と大江の建築の印象を、まったくちがうものにしている。
          ―1968年、川添登 著「建築家・人と作品」より抜粋

しかし、その耳たぶは全く逆であった。

福耳は縁起が良いとされ、日本の神の多くにも伺える。
もはや神格化されたふたりの耳も、まさに福耳であった。
丹下の耳は縦長、大江の耳は横長のプロポーションである。

簡単なことのようだがこれが丹下と大江の顔の印象を、決定的なものにしている。
          ―2006年、種田元晴 画「縦と横への意識と実際」

種田元晴
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